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【計量経済学】資源・環境経済学における因果推定の最前線: JAEREの特集

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刊行予定のJournal of the Association of Environmental Resource Economistsの特集で
"Causal Inference in Environmental and Resource Economics: Challenges, Developments, and Applications"というのが出る。

資源・環境経済学でよく用いられる因果推定手法についての研究や、その応用についての研究の特集だが、手法系の3本のサマリーだけざっと読んだのでメモ。

1. "What are the Benefits of High-frequency Data for Fixed Effects Panel Models?"

Ghanem & Smith
https://www.journals.uchicago.edu/doi/10.1086/710968

要約

データを集めるコストが低い時代になって、多くの高頻度データ(日毎、1時間毎など)が利用可能になっているが、分析のしやすさなどから低頻度にっ集計して使うケースがよく見られる。

特に固定効果モデルにおいて、高頻度データと集計された低頻度データでパラメータに一致性があるかどうかを計量経済学的に評価したのがこの研究である。
結論としては、データを集計する際には、高頻度のデータにおいてどういうデータ生成プロセスがあるかを考慮しないといけない、としている。
例えば、

  • 効果に対する異質的な反応
  • 高頻度と低頻度のデータの共変数に対する異なった反応
  • 高頻度データにおける共変数に対する非線形的な反応
  • 観察されない異質性のレベルの数が高頻度と低頻度で変わる

ことなどを考慮して、集計してよいかどうかを判断する必要がある。

メモ

非常に重要な観点で、固定効果ではないが高頻度データとその集計という意味では自分の研究にも関わる。

2. The Role of Parallel Trends in Event Study Settings: An Application to Environmental Economics

Marcus and Sant'Anna
https://www.journals.uchicago.edu/doi/10.1086/711509

要約

差分の差分法において、異なったタイミングの処置や政策施行が行われた場合(イベントスタディ)の平行トレンド仮定(Parallel Trend Assumption) について、どういった仮定を立てているかきちんと考慮すべきだとしている。また論文の中で提案されている推定法は、既存の手法よりも弱い平行トレンド仮定でも一致性を保つことができる。

メモ

それぞれ異なった平行トレンド仮定というのがどういうものか、もう少し時間を取って読みたい。

3. Measuring Heterogeneous Effects of Environmental Policies using Panel Data

Steigerwald, Vazquez-Bare, and Maier
https://www.journals.uchicago.edu/doi/10.1086/711420

要約

差分の差分法などで一般的に用いられる2変数固定効果(Two-way fixed effects)は、個人などの単位と、時間についての固定効果を含めるものだが、
この推定法は政策タイミングのばらつきや、効果の異質性がある場合には問題を生じさせるという指摘をおこなっている。

また、時間によって効果が異なる場合、たとえば政策施行直後としばらく経った後での効果などの場合は、サンプルピリオドによって推定値が変わることが指摘されている。つまり、サンプルピリオドによって、異なるパラメータが推定されていると理解されるべきである。

また、このセッティングにおいて、クラスター標準誤差は実際のクラスター数ではなく有効クラスター数に依存するとしている。

メモ

有効クラスター数とは?
クラスターの異質性を考慮して、実際のクラスター数より少ない有効クラスター数を用いて標準誤差を計算することによって
頑健性が担保されるという研究がある。
https://www.mitpressjournals.org/doi/pdf/10.1162/REST_a_00639