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【読書】高城剛『2035年の世界』

高城剛氏による20年前後に起こる未来についての本である。出版が2014年なので少し古いが、内容が答え合わせできるものも少しある。

2035年の世界

2035年の世界

  • 作者:高城 剛
  • 発売日: 2014/10/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


著者の高城剛氏は沢尻エリカの元夫で、最近沢尻エリカ逮捕で少しテレビなどにも出ていた。
一時期ハイパーメディアクリエイターという肩書を使っていて、世間からなんじゃそらという目で見られていたが、彼の著作はまだ世間的には注目を浴びてないがこれから来る、というものにいち早く着目する物が多く、
LCCの新書を読んでから注目していてTwitterもフォローしている。

twitter.com


未来を予測する、という言葉には背景によって意味が異なってくる。

未来予測本というと、〇〇年に経済が崩壊する!なんていうトンデモ本が思いつくが、実際に現状を分析して未来に何が起こるかという未来学という学問も存在する。また、未来学では完全に未来は予測できないので、あるシナリオのもとでどうなるか?という分析も多い。

例えば軍事や地政学で世界がどうなっていくか?というタイプの本も存在する。例えば『100年予測』などはその典型的なタイプだ。また、経済や社会の予測でエキセントリックに煽るものではなく、分析に基づいたものだと、『富の未来』が思いつく。


一方で、高城剛の予測は技術や文化に重点が置かれている。本書は未来に起こりうる100の項目について短い説明が並ぶタイプの本である。目次を見てみると、いかにも未来というキーワードが並んでいる。例えば、薬事ロボット、生体情報対応広告、移動可能な家、空飛ぶ自動車、小惑星アポフィス、ILCから新エネルギー、などである。

キーワードだけ聞くとぶっ飛んでいて、ドラえもんの道具かと思うようなものもあるが、実際に説明を呼んでいるみると、すでに行われて実在する研究やアイデア、すでに実用化されている例などが挙げられており、現実味を感じる。沢尻エリカの元夫で、チャラそうな中年というイメージが先行するが、世界を飛び回っていろんなことを見聞しているのは伊達ではないと感じる。



例えば、「空飛ぶ自動車」。夢物語に聞こえるが、すでにアメリカのテラフジア社という会社が二人乗りのスカイカーを販売予定だという。ボタン一つで羽根が展開し、公道から飛び立つことも技術的には可能だが、法律的に難しいので滑走路から飛ぶ必要があるという。

本書は2014年に書かれた本なので、調べてみたら、Terrafugiaは中国の浙江吉利という自動車会社に買収され、予算と人員を得て今では予約注文を受けているところだという。また、大手のボーイングエアバスもプロジェクトに着手しているという。

ウェブサイト
https://terrafugia.com/



文化などの点でも先進的な事例をもとに予測が展開されている。例えば、「スモークフリーと脱アルコール」。ヨーロッパでは喫煙やアルコールに対する規制が強いところがある。それは単なる禁止ではなく、「喫煙やアルコール摂取はクールじゃない」という考えが浸透してきているからだ。日本だと、禁煙は広まってきているが、アルコールに関してはまだまだだろう。しかし、ヨーロッパではハードリカーと呼ばれるウイスキーなどの度数の高い酒は規制がかかってきている。

私が住んでいる国でも、スーパーで5%までのビールは買えるが、ワインやウイスキーを含む度数の高い酒は政府指定の酒屋に行かないと買うことができない。また、スーパーは夜遅くまで開いているが、ビールは夜8時までしか買えず、それ以降はビールの冷蔵棚にシャッターが降ろされる。タバコのような厳しい規制がお酒にもかかるのだろうか?まさかとも思うが、昭和時代にはどこもかしこもタバコが吸えたのが、今では飲食店の中ですら禁止されようとしていることを考えれば、ないともいえない。


さらに、「オートマトン」という項目。もとは自律的に動く機械人形のことだが、今ではAIの進化によって自分自身でオートマトンを生み出すロボットになっていく未来があるという。いわゆる技術的特異点(シンギュラリティ)であるが、そうなったときに人間が行う職業として残るのは「精神世界に精通した人」だという。AIに職を奪われた人は仮にAIのほうが優秀だとしても人間のセラピーを受けたがる。人々が求めるものはより「人間らしい」精神の癒やしになるという分析だ。そういう意味では科学全盛のこの時代においても未だに様々な宗教がなくならないことは合点がいく。



昨今のコロナウイルスに関連すれば、「有害物質は化学からバイオへ」の項目は興味深い。かつての日本や少し前の中国のような健康を害する公害は化学物質が原因だった。しかしこれからは遺伝子組み換えに基づく「バイオ物質」が脅威となる。それは遺伝子組み換えのプロセスによる人為的な可能性もあるし、気候変動などの自然による可能性もある。そして例としてインフルエンザの近年の広がり方を指摘している。


新書であるし、学術的な本ではないため、ソースが不明瞭なものもある。しかし、高城剛氏自身多くの書籍を著していて詳しい説明は彼自身の著作にあるものも多い。例えば自転車を活用した「バルセロナモデル」ならNEXTTRAVELERシリーズにバルセロナがあるし、オーガニック系の食事などのトレンドについては『オーガニック革命』が詳しいようだ。
一つひとつは見聞きした話なども多いのでソースがわからないが、上のスカイカーの例のようにキーワードをもとに検索して調べていくと知らない世界が広がっているものも多い。

未来がどうなっていくのか考え、自分がどう行動するかを考える上で入口となる本であるように思う。


冒頭で言及したLCCについての本はこちら。LCCなんて今では常識だが、当時私は大学生で、日本にはまだスカイマークぐらいしかなかった頃に読んだこの本は衝撃だった。

「100年予測」はこちら。

また『富の未来』は上下巻である。

富の未来 上巻

富の未来 上巻

富の未来 下巻

富の未来 下巻